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 山中律雄『光圏』
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 僧侶として身口意の調和を説く著者が、みずからの身に癌の宣告を受けた時、混乱と葛藤にこそ、生の実相を、その輝きを見たのは、歌人なるがゆえであった。茂吉、佐太郎の流れを今日に受け継ぎ、昇華した歌がここにある。
裏畑に実りて赤きミニトマト作も法もなく四つ五つ食ふ
朝顔の花を数へてゐる妻かわづかに下の顎うごかして
いとけなき子らといへども金銭に話およべばいきいきとする
死の淵に日日過ごしゐて釈尊の教へさしたるものと思はず
うちつけに闇のなかよりあらはれて蛾が街灯の光圏を飛ぶ 
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