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井口可奈歌集『わるく思わないで』
¥2,750
予約商品
第11回現代短歌社賞受賞 「安定した不安定さ」とでも呼びたくなる文体にゆるぎない作家性を感じ、「みつけた」という確信を抱いた。 平岡直子 不適応の記号をなぞりながら、世界に対する〈わたし〉の負けを、むりやり勝ちへとひっくり返そうとする。 乾 遥香 言葉自体がもつ自発的な跳躍力を十全に発揮させている。読者はそのエネルギーにただただ身を任せればよいのだ。 大辻隆弘 洗濯機まわるエリーゼのためにかもしれない曲はほそながい川 さわらないようにしている仁丹をあなたはぐちゃぐちゃさわれてすごい 月おぼろあなたなに言ってるのって言われあきたよ水は透明 手をつたう水のわたしっぽくなさとわたしっぽさのあいだに桃が これからの杏仁豆腐どうでしょうすべてわたしに任せてみるのは 定価:2750円(税込) 判型:四六判変形ハードカバー 頁数:204頁 ISBN:978-4-86534-474-5 発行日:2024年4月29日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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吉川宏志歌集『雪の偶然〈新装版〉』
¥1,980
予約商品
第58回迢空賞受賞作、〈新装版〉にて再刊。 修辞は、想像力は、ここまで磨きぬかれた。 世界の惨を、歌い尽くすために。 言葉は、ついに、無力だった、と証すために。 言葉より狂いはじめし世にありて紅葉は何の内臓ならむ 慰安所の扉に続く列がある 水溜まりを避けて途切れたる列 幼な子が見しものは絵に残されて踊るごとし銃に撃たれたる人 銃床に使われるというクルミの木 枝をくぐりて雪は降り来る 匙もつ手 鱈をさばく手 ウラジーミル・プーチンと書き紙を折りし手 定価:1980円(税込) 判型:四六判ソフトカバー 頁数:240頁 ISBN:978-4-86534-483-7 発行日:2024年5月21日 発行:現代短歌社
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内藤明著『抒情の構造 ―喪われた〈故郷〉の位相』
¥4,180
近代短歌は、万葉集をはじめとする歌の古層から、喪われた〈故郷〉を幻視する術を継承した。だが、〈故郷〉があったことさえ忘却された今日、始原への憧憬が、鉄幹、晶子、子規、左千夫、茂吉、白秋、空穂、御風、牧水、また武川忠一、上田三四二、玉城徹、山崎方代らにおける〈故郷〉の位相を読み解くことへと著者を向かわせた。『万葉集の古代と近代』に続く労作。 世界の秩序が音を立てて崩壊していく様を、われわれは目の当たりにしている。(略)あらゆる境界が失われ、内部も外部も混沌とした現在、人間と自然の一体といった認識は、神話であるとともに現実でもある。壊れ浮遊しつつ、自然に包摂されていく主体から発せられる、現代の絶望と祈りが一体となった歌を、私は夢想するのである。[本書より] 本書の内容 序 絶望と祈り Ⅰ 万葉集とうたの生成 第1節 祈りと再生―『万葉集』天智天皇挽歌群を素材として 第2節 抒情の構造―始原への憧憬 第3節 季節の叙景―人麻呂歌集宇治河作歌二首をめぐって 第4節 漂泊・叙景・抒情―高市黒人と山部赤人 第5節 表現としての恋―坂上郎女 第6節 老いと人生―旅人と憶良 第7節 規範性からの逸脱―東歌をめぐって 第8節 『万葉集』に鳴く鳥 第9節 根源へむかうもの―五つの元素と歌 Ⅱ 近代短歌の成立 第10節 〈近代化〉と〈短歌〉 第11節 〈われ〉の生成・主体のゆくえ 第12節 和歌・短歌の音楽性 第13節 与謝野鉄幹覚書 第14節 与謝野晶子の春 第15節 晶子の熟成―『舞姫』と『夢之華』 第16節 晶子晩年の一首 第17節 正岡子規―継承と創造 第18節 伊藤左千夫―「おりたちて」の意味するもの 第19節 斎藤茂吉『赤光』と『万葉集』―原郷の彼方へ 第20節 茂吉の戦中歌集 第21節 北原白秋『雲母集』と『梁塵秘抄』―「赤」への傾倒 第22節 窪田空穂―〈実感〉への信頼 第23節 空穂と『万葉集』 第24節 相馬御風―飛翔と回帰 第25節 若山牧水の〈自然〉 Ⅲ 武川忠一と戦後の時間 第26節 歴史と時間―古代の歌などをめぐって 第27節 現実と源泉と―歌論家・批評家としての武川忠一 第28節 風土の生成―武川忠一『氷湖』をめぐって 第29節 「ひかり」への憧憬―上田三四二小論 第30節 表現主体の影―玉城徹『樛木』寸感 第31節 重層化する〈私〉 ―「方代」と「われ」 第32節 記憶と詩―山崎方代『迦葉』 終章 第33節 故郷のありど 第34節 喪失と郷愁 定価:4180円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:434頁 ISBN:978-4-86534-477-6 初版:2024年3月31日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院(gift10叢書第55篇)
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江田浩司著『短歌にとって友情とは何か』
¥1,980
歌人の友情はいかにして可能か? 友情を妨げる歌壇の力学とは? 問われたことのない問いから、歌人の精神のありようが見えてくる。 本書の内容 Ⅰ 短歌にとって友情とは何か 序章 「ずっと、ここにいるから。」 1 友情の限界 ―石川啄木と金田一京助 2 友情の本質 ―与謝野鉄幹と北村透谷・薄田泣菫/石川啄木と土岐善麿 3 孤独と友情 ―斎藤茂吉と吉井勇 4 友情の美点 ―玉城徹と級友/岡井隆と相良宏 5 友情は愛に似て ―与謝野晶子と山川登美子/三ヶ島葭子と原阿佐緒 6 友情と恋愛の間に ―田辺元と野上弥生子/西行と西住 7 友情を包む光 ―岡井隆と米田利昭 8 友情と夭折 ―小中英之と小野茂樹 9 友情と追悼 ―岡井隆と大岡信 10 友情と思想 ―馬場あき子と中国革命 11 時代を超える友情 ―本歌取り 12 友情の消滅 ―二冊の本 13 批評の不在 ―友情を妨げる力学について 14 超実践的短歌鑑賞用語辞典 終章 「また、あいましょう。」 Ⅱ 寺山修司をめぐる断想 1 不連続体について ―未発表歌集『月蝕書簡』を読む 2 「新しい個」の表現 ―『寺山修司の俳句入門』を読む 3 寺山修司と「作者の死」 定価:1980円(税込) 判型:新書判ソフトカバー 頁数:160頁 ISBN:978-4-86534-437-0 発行日:2024年2月26日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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正岡豊歌集『白い箱』
¥2,970
1990年に『四月の魚』を刊行、穂村弘らの称賛を浴びた著者。33年の沈黙を破って上梓する第二歌集。 この歌集には、昭和最後の男の児の声が充満している。そもそも私にとって正岡豊は、〈沼になる寸前をきみにみられてしまう〉や〈鷹としてふいにけむりをさけるかな〉の俳人なのだ。感傷の欠片も無く、地獄の機械【インファナル・マシン】のように美しい正岡の俳句を人間化したのが『白い箱』の短歌だ、と私は理解した。当否は知らない。 高山れおな きみのはだかが輝かないくらいランプだったことをきみは知っていたか 韻律がぼくを忘れた夕暮れにきみはわらびもちぶらさげてくる 細胞膜はあっても細胞壁はないわたしとあなたでのぼるやまなみ 星がひいたおみくじのなかにウスバカゲロウの羽根で出来たのが二枚 コッペリア ティアラ カチューシャ チュチュ ドレス シューズ 砂漠に咲く赤い花 定価:2,970円(税込) 判型:A5判変型ソフトカバー 頁数:244頁 ISBN:978-4-86534-435-6 初版:2023年12月13日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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鳥居あけみ歌集『ぶだう一房』
¥2,970
2007年以降の作を収める第二歌集。かりん叢書第428篇。 人生の大きな曲がり角を曲がりながら、作者の精神はたくましい。 現実への鋭い眼差しも、秘めた情熱も、下句にくっきりと刻まれるのである。 米川千嘉子 はしゃぐ子らの声響きくる平和とはぶだう一房シェアするベンチ 定価:2,970円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:210頁 ISBN:978-4-86534-434-9 初版:2023年12月13日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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大辻隆弘歌集『水廊』
¥880
トーキョーが俺の短歌をばかにする 春夜ゆゑなき憤りはや 青春はたとへば流れ解散のごときわびしさ杯をかかげて 品切となっていた著者第一歌集(第一歌集文庫版)を再刊。 疾風にみどりみだるれ若き日はやすらかに過ぐ思ひゐしより わたしはこの一首を現代の青春歌の代表的な一つに算えたいと思った。(略)かれの青春と同時に、一世代以上前のわたしの青春も映っているような気がして心いたむのだ。 岡井隆 文庫版解説=山吹明日香 定価:880円(税込) 判型:文庫判 頁数:124頁 ISBN: 978-4-86534-432-5 第2版:2023年8月25日
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秋のひかり
¥2,970
沼沢修君は、正真正銘の「みちのくびと」である。 「みちのく」への思いは優しく深い。しかも、歌の内容は多彩で美しい。啄木にとって「ふるさとの山」は岩手山だったが、沼沢君にとってそれは月山と鳥海山であると言ってよい。 岡本 勝 芭蕉越えし猿羽根(さばね)峠のやまざくら残雪ほそる谿に散りゆく 羽根ひろげ秋のひかりに落つるときおのずから光(て)る科(しな)の木の実は 雪道に濡れつつわれを待ちし母想えば母がふる里なりき 定価:2970円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:214頁 ISBN:978-4-86534-430-1 発行日:2023年9月7日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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金沢青雨歌集『またね』
¥2,200
「詠み手は、心が動くふとした瞬間のきらめきを逃すまいという抑えがたい衝動に駆られ、歌を詠みます」 本歌集の「あとがき」にそうあった。驚いた。私は必ずしもこうは思わない。けれども金沢さんはそのように断言している。そしてこの断言に私は胸を打たれる。 染野太朗「跋 きらめきについて」 淡雪は紫苑に染まる夕暮れにやわらかく舞いレンガを包む 地より湧く水を手桶になみなみと満たせど漏れつ逢わずにいれば すこしだけひとりになって考えるそしたらあすからまたがんばれる 定価:2,200円(税込) 判型:四六判変形 頁数:110頁 ISBN:978-4-86534-427-1 初版:2023年8月10日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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長谷川麟歌集『延長戦』
¥2,200
第10回現代短歌社賞の長谷川麟が描く、 僕らの僕らによる僕らのための延長戦の記録。 いい映画だったね、とだけ言うことに決めてからエンドロールが長い 空振ったけれどもこれは悪くないスイング 春は一気に迫る アルティメット大好き級の恋だからグラップラー刃牙全巻売った 定価:2200円(税込) 判型:四六判変形 頁数:228頁 ISBN:978-4-86534-426-4 発行日:2023年7月23日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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中村ヨリ子歌集『徳不孤(とくはこならず)』
¥2,750
長く苦しい葛藤の時が過ぎ、 心静かに茶の湯をたのしむ今がある。 徳を積めば、必ず助けてくれる人がいる—— 遠く故郷に掛けられた一扁の額に、 人生を導かれるかのように。 目の子算できないほどにさくらの葉散れば梅雨明け沖縄の地は 早朝の茶会に遅れ来るという一人のために炭を継ぎ足す 客人と幾度行きしや首里城の優待券の二枚が残る 「おいしくないから食べて」と言いし義母のように辺野古に言うか普天間基地を わが一生大河ドラマを演じたと思えばよろし誰も恨むな 定価:2750円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:218頁 ISBN:978-4-86534-425-7 発行日:2023年6月24日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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佐々木剛輔歌集『〈新版〉棄民』
¥880
著者が生涯をかけて詠い続ける満州の記憶。 歌集『棄民』に『満蒙開拓国策愚か』より100余首を収録、再編集して文庫化。 解説=橋本喜典 文庫版解説=染野太朗 白地図の「満州」に赤き色を塗るぬり絵あそびは遊びにあらず 定価:880円(税込) 判型:文庫判 頁数:150頁 ISBN:978-4-86534-408-0 発行日:2023年6月30日 発行:現代短歌社
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長澤一作歌集『春の残照』
¥2,970
17歳で佐藤佐太郎に師事し、写実の刷新に努めた長澤一作の遺歌集を没後10年を記念して刊行。61歳から87歳までの2000首余りを収録。 あぢさゐの花暗みゆくかなたにて梅雨の曇ににじむ夕映 池水の濁り揺らぐと思ふとき用あるごとく亀浮びくる 浅宵の小公園によどみゐる栗の花の香よぎりて帰る 定価:2970円(税込) 判型:四六判ソフトカバー 頁数:422頁 ISBN:978-4-86534-423-3 発行日:2023年6月24日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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梅津純子歌集『白き川』
¥2,750
秩序を失った世界を厳しいまなざしで見つめる、「山麓」所属の著者の第二歌集。 年だから女だから一人だからイザベラ・バードの辞書に無かりき 万策の未だ尽きぬに果てし知事悼みてわれも雨の七万人 除雪機の青と黄色が陽を返すウクライナの子らに春はいつ来る 定価:2,750円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:268頁 ISBN:978-4-86534-421-9 初版:2023年4月28日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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田宮智美歌集『にず』
¥2,200
私は田宮さんにお会いしたことはない。でも、遠くで戦っているあなたを、ずっと知っていたような気がする。 北山あさひ(「栞」より) 電柱の根元にタンポポ咲いていて 生命保険審査に落ちる こんなにも美味しいわたしの唐揚げをわたし一人が食べている夜 しあわせな歌が詠みたい誰からも全然ほめられなくていいから 定価:2000円(税別) 判型:四六判ソフトカバー 頁数:176ページ ISBN: 978-4-86534-330-4 発行日:2020年7月15日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院(gift10叢書第29篇)
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山中律雄歌集『淡黄』
¥3,300
若き日に、川島喜代詩の添削を受け、「没すべき細部」などの骨法を学んだ著者。 佐藤佐太郎から川島喜代詩へと続くうたの流れに、おのれを濯ぎながら、到り着いた境地がここにある。 病を得て生死と向き合った圧巻の連作を収める第五歌集。 海上に雲去りゆきてはつ夏の風吹く街は空軽くなる 墨染めの僧衣まとひて乗るバスのわれの傍へに人は座らず 追熟を待てと言はれしマンゴーをその日に食ひてほぼ無駄にする 死者生者けぢめなくして暁の夢に睦みて言葉をかはす 満開とおもひて桜あふぎしが二日経てけふかがやきを増す 定価:3300円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:198頁 ISBN:978-4-86534-401-1 発行日:2022年9月17日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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田村穂隆歌集『湖とファルセット』
¥2,200
肉体に封じこめられた魂。湖のむこう岸のように遠く、かすかにひびくその声【ファルセット】が今日も聴こえる—。第8回現代短歌社賞次席の著者の、清冽なデビュー作。 栞=内山晶太・川野芽生・阿木津英 そうか、僕は怒りたかったのだ、ずっと。樹を切り倒すように話した 定価:2,200円(税込) 判型:四六判ソフトカバー 頁数:176頁 ISBN:978-4-86534-362-5 発行日:2022年3月1日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院(gift10叢書第42篇)
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佐々木漕歌集『天飛む』
¥2,750
佐々木さんの歌たちに、僕は面従腹背のポエジーを見る。 この徒労あふれる不条理の世を、微苦笑の詩で討ち、 ひとりの魂の揺らぎが刻印されるのを見る。 黒瀬珂瀾 第7回現代短歌社賞佳作の著者の第一歌集。 スタバこそ悲しきものを夕べまた峠を越えて尋ねゆきたり ちゅうしんが私のなかでかたむける五月雨色の椅子に耐え来し 妻ふいに仕事やめたらというときに天飛む軽き心となれり 定価:2,750円(税込) 判型:四六判ハードカバー 頁数:214頁 ISBN:978-4-86534-419-6 発行日:2023年4月12日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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川上まなみ歌集『日々に木々ときどき風が吹いてきて』
¥2,200
うたは風を奏でる、 あなたが世界を諦めてしまわないように。 第9回現代短歌社賞次席の著者の第一歌集。 可燃ごみまとめて捨てにゆくときの朝のこんなにきれいな鼓動 教卓の前に座ってあこがれの人を光に例えている子 泣けばいいのに泣かないからよ 妹はパン生地をこねながら笑った 「ARBEIT MACHT FREI」の看板をぬけるとき耳に薄氷を張る 出勤の車の中で泣くような春になっても春は好きだな 定価:2200円(税込) 判型:四六判変型ソフトカバー 頁数:172頁 発行日:2023年3月19日 ISBN:978-4-86534-420-2 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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春日いづみ著『シネマ交響曲』
¥1,980
映画が芸術であることを上映を通じて示し、2022年7月に惜しまれつつ閉館した岩波ホール。 著者はこのホールで1983年より30年にわたり上映作品のパンフレットのシナリオ採録に携わった。 映画を主題とする珠玉のエッセイに、既刊歌集より短歌作品62首を付す。 定価:1980円(税込) 判型:新書判ソフトカバー 頁数:168頁 ISBN:978-4-86534-400-4 発行日:2023年1月26日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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永井亘歌集『空間における殺人の再現』
¥2,420
第9回現代短歌社賞受賞の奇才、ここにデビュー。 生きるとき死体はないが探偵は文字をひらめく棺のように カナリアが微笑みながらどの声のあなたが老いていくのだろうか トリックが僕の自由を手に入れて死んでも驚かなくていいよ 夏にして言うべきことは叙景へとやわらぐ光なのに言えない どんなに長く雲の中を歩いても雷に打たれないのは運命だからかな 定価:2420円(税込) 判型:A5判変型ハードカバー 頁数:260頁 発行日:2022年12月25日 ISBN:978-4-86534-415-8 発行:現代短歌社 発売:三本木書院
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髙橋みずほ歌集『野にある』
¥3,300
遠く北の地から広範囲の太平洋沖でおきた巨大地震から十一年の歳月が過ぎた。その地をふるさとと呼ぶ者にとって、震災後はじめて降り立った新幹線の駅の空気感はからだの奥深く染み込んで今もある。(略)そして十年が過ぎてからはじめて、目の前にしたものが言葉となった。 (本書「野に思う」より) 振り向いてここに人がいたひろがりに深くひとたちがいる 髙橋みずほは、野にたたずむ歌人である。 その声は、吹く風にかき消され、途切れては、紡がれる。 それは短歌なのだと気づいて、私たちは定型詩の残響をとらえようと耳を凝らす。 風の音のむこうに、言葉になりえなかった、沈黙の声が聴こえる--。第十歌集。 定価:3300円(税込) 判型:A5判変型ハードカバー 頁数:200頁 発行日:2022年11月24日 ISBN:978-4-86534-410-3 発行:現代短歌社 発売:三本木書院(gift10叢書第48篇)
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打矢京子歌集『冬芽』
¥2,750
第9回現代短歌社賞受賞作 この歌集の世界は、単なる現在ではない。一冊の歌集になるまでにも幾度も同じような過去が積み重なっている。それが未来へとつづき、そこにまた同じような人生がある。循環、複層化する時間・空間が「遠い未来の昔」をつくる。だからだろうか、どこか恐ろしいものを感ずるのだ。生きているのは風土の方で人は何ほどのものではないと。それがこの歌集の魅力の根基であろう。(一ノ関忠人「栞」より) 栞=一ノ関忠人・黒瀬珂瀾・阿木津英 雪しろを遠くはこびて来し川の終はりて海とひかり溶けあふ 寒の日の浜辺の丘に建つ墓のみなひとかたに雪の張りつく 夜の空をこゑ移りきて白鳥が街の灯りにたまゆら浮かぶ 雪の田のみづからの影吸ひあげて白鳥幾羽空へ飛び立つ 在りし日の父母を思ひてわれら亡き後をし思ひ仏具を磨く 定価:2750円(税込) 判型:四六判変型本フランス装 頁数:196頁 ISBN:978-4-86534-409-7 発行日:2022年10月26日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院(gift10叢書第49篇)
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前田康子歌集『おかえり、いってらっしゃい』
¥2,200
前田康子は森羅万象を等しく母の眼で見ている。水俣を、長島愛生園を、辺野古を、撲り殺されるアホウドリを、腹ぺこの熊を、路傍の草花を、同じ眼差しで捉えている。本当の事を知る者の冷えきった哀しみと、母としての祈りと。だから、その歌をポケットにしのばせておきたくなるのだ。「古ぼけたお守り」のように。 第5回佐藤佐太郎短歌賞受賞後初となる第六歌集。 会うたびにどこから来たの 朝顔の頃あなたからこぼれ落ちたよ ひんやりと足踏みミシンに秋が来て踏めば遠くに行けるだろうか 桜いろ桃いろやさしき赤紙は物資不足のゆえと書かれき おかえりといってらっしゃい言えぬ場所へ子ら二人とも行ってしまえり ひと粒のぶどうは丸く閉じたのに私の歯もて剖【ひら】かれてゆく 定価:2200円(税込) 判型:四六判ソフトカバー 頁数:188頁 ISBN:978-4-86534-405-9 発行日:2022年8月26日 発行:現代短歌社 発売:三本木書院