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清水弘子歌集『夏麻引く』
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夏麻(なつそ)引(ひ)くいのちを漕ぎぬ背泳ぎのわれの腕(かひな)は水を捉へつ
情景が、読者の目に浮かぶように描かれているだけで、
優美な雰囲気が生じてくる歌がある。
そのような歌を作れる人は、あまり多くない。
清水弘子さんは、視覚的・写実的でありつつ、
艶のある歌を作ることができる人だ。
旧仮名を効果的に用いたやわらかな韻律も、
その味わいをさらに豊かにしている。 吉川宏志
甘海老の抱ける銀河状たまごあはあはとせり青ひかりつつ
ぬばたまの夜の風呂場に乳房(ちちふさ)を膝につぶして髪洗ひゐつ
何を見てもなにかを思ひだしてゐる 焔は焚木をはなれつつ燃ゆ
いくたびも風を乗りかへ紋白はあるところより空にまぎれる
山葵(わさび)田(だ)のひかりしづかな夕つかた水車は水を捨てつづけてゐる
雨の止み馬蹄型なす天気図もゆるびてあらむ夕映えきざす
月光をふかくみちびく合歓の木となりて莢など垂らしてゐたい
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