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『万葉集の古代と近代』[内藤明 著]

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今日のわたしたちは万葉集をひもとき、額田王や柿本人麻呂ら作者個人の感情表出をそこに読もうとする。だが、それは近代に起きた転倒だった。万葉集においては、人間と自然の、個と集団の、相互性のなかで、さまざまな位相の抒情主体が生成していた。自家中毒を起こしたら、本書を開くとよい。本書がわたしたちを自由にするだろう。



ここでいう「近代」は、百年余の万葉内部の史における「近代」であり、また万葉集から千数百年を距てた時代としての「近代」の両義を持たせようとしたものである。そして、古代的なるもの、近代的なるものを考えたいと思ったのだが、いかようにとっても近代はとらえがたく、古代や始原への探索は玉葱の皮剥きにも似る。(「あとがき」より)

本書の内容
序 万葉集と現代
Ⅰ うたの構造と様式
第一章  二景対照様式の生成と展開―歌謡・初期万葉・人麻呂歌集
第二章  短歌の二部構造と主体―「見れば……思ほゆ」の型をめぐって
第三章  うたにおける「物」と「思」―人麻呂歌集の寄物陳思歌
Ⅱ 柿本人麻呂作品を読む
第四章 人麻呂歌集七夕歌―七夕歌の生成
第五章 近江荒都歌―構造と位相
第六章 吉野讃歌―歴史と表現
第七章 石見相聞歌―語りと独白
Ⅲ 万葉集の言葉と世界観
第八章 「うつせみ」―讃美と無常
第九章 「みやび」―都市と和歌
第十章 「ますらを」と「たわやめ」―幻想としての性
第十一章  「うれへ」―旅愁と豊饒 高橋虫麻呂の筑波山に登る歌
Ⅳ 万葉集と近代
第十二章  歌人の生成―大伴家持をめぐって
第十三章  万葉集の近代と古代―空穂・茂吉から人麻呂・家持へ
第十四章  「気分」とは何か―窪田空穂と「気分」
Ⅴ 和歌が問いかけるもの
第十五章  うたの始原へ―研究史・和歌の本質と表現
第十六章  和歌・短歌と共同体―うたのゆくえ

四六判ハードカバー376頁
ISBN978-4-86534-354-0
定価 3800円+税

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