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写生と反写生という二項対立の図式は、空疎な主導権争いを生んできた。そう考える著者はこの相克に終止符を打つべく、塚本邦雄、岡井隆、山中智恵子、浜田到、玉城徹らの作品に具現化した言葉のリアリティーを、周到に読み解いてゆく。真のリアリズムを求めて疾走する、スリリングな1000枚。
「私は葛原妙子の歌の世界を純粋に楽しむことができますが、山中智恵子の歌ではそれができません。山中の歌が内包する虚無が、歌を楽しむことへの脱臼を図るのです。(略)どちらかの歌を一つ選べと言われた場合には、私は迷うことなく山中の歌を選びます。それは、山中の歌が私にとっての「前衛短歌」であり、葛原の歌はそうではないということです。」(本書より)
本書の内容
はじめに 過剰さについて
第一章 岡井隆論
Ⅰ 原発と前衛
Ⅱ 岡井隆はなぜ詩を書くのか
Ⅲ 「詩とは何か」に答えて
Ⅳ 〈持続する書きもの〉をめぐって
――『注解するもの、翻訳するもの』を読む
Ⅴ 共同詩の現場
――創作に更新をもたらす他者
Ⅵ 詩人の首を飾る歌人
――歌集『土地よ、痛みを負え』再読
Ⅶ 中断と注解
Ⅷ 『神の仕事場』から『静かな生活』へ
――「未来」創刊60周年記念大会の報告といくつかの感想
Ⅸ 詩作と思索
――『詩歌の岸辺で』書評
Ⅹ 文学としての短歌の危機を生きる
――歌集『銀色の馬の鬣』書評
Ⅺ 虚無からの使者
――歌集『鉄の蜜蜂』書評
Ⅻ 蒼白の馬との遭遇――哀悼 岡井隆
第二章 山中智恵子論
Ⅰ 「鬼のよはひ」を共に生きた歌人
――前川佐美雄と山中智恵子
Ⅱ 破調と両性具有
――未刊歌集『青扇』を中心に
Ⅲ 短歌の全体性回復への希求
――ミルチャ・エリアーデの影響、その他
Ⅳ 言語を覆す詩人
――黒岩康「山中智恵子研究」、その他
Ⅴ 「伊勢の闇」とは何か
――富士谷御杖の言霊倒語説
Ⅵ 連作の構造
――「雨師すなはち帝王にささぐる誄歌」の改作について
Ⅶ 「新しいリアリズム」の追求
――初期から中期に向けての一字空白を含むテクストの考察
Ⅷ 「前定型」への回路
――中期から最晩年に向けての一字空白を含むテクストの考察
Ⅸ 批評軸としてのクリステヴァ、迢空
Ⅹ あかときやみの歌はあめなるひばりかげ
――『山中智恵子全歌集 下巻』書評
Ⅺ 存在本質の表出
――晩年の秀歌
Ⅻ 山中智恵子句集『玉すだれ』を読む
13 山中智恵子について語ろう インタビュー(聞き手=「北冬」編集部)
第三章 浜田到論
Ⅰ 言葉の内なる遭遇
Ⅱ 浜田到についてのノート
Ⅲ 「死」と「少女」――浜田到のリルケ享受の一側面
Ⅳ 浜田到のリルケ享受についての補記
第四章 塚本邦雄論
Ⅰ 短歌の言葉――塚本邦雄のテクストを中心に
Ⅱ 塚本邦雄の一字空白を含む初期テクストについてのメモ
Ⅲ 塚本邦雄と北村太郎
Ⅳ 新たな読みの提出
――塚本邦雄七回忌記念「神變忌シンポジウム」報告記
Ⅴ 構造化からの詩的脱臼は可能か
――リアリティーの本質の隠蔽について
第五章 玉城徹論
Ⅰ 詩的原体験としての松尾芭蕉
――「連句」と「調べ」の問題を中心に
Ⅱ ニヒリズムからの脱却
――第一歌集『馬の首』の評価をめぐって
Ⅲ フィクショナルな劇性
――第三歌集『樛木』巻頭歌について
Ⅳ 歌集を解体する方法
――自選歌集『汝窯』に関する一、二の感想
Ⅴ やまとうたの心
――第四歌集『徒行』の構成を中心に
Ⅵ どこまでも詩の人
――印象に残る歌
Ⅶ 白秋と茂吉
――玉城徹の眼力の恐ろしさ
第六章 言葉のリアリティーの探求
Ⅰ 現代詩としての未来の短歌に向けて
Ⅱ 短歌のポエジーとは何か
Ⅲ 塚本邦雄・大岡信の方法論争によせて
Ⅳ 塚本邦雄『綠色硏究』を中心に
Ⅴ 山中智恵子と浜田到
Ⅵ 山中智恵子とヴァレリー、富士谷御杖
おわりに 葛原妙子と山中智恵子
――存在論的な歌の差異について
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