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林宏匡歌集『ニムオロのうた』

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生後間もなく樺太に渡り、終戦を樺太庁真岡町で迎えた著者。長じて父と同じ医の道を歩み、34歳からの5年間、根室で僻地医療に従事する。この時期を含む10年間の清冽な抒情を第一歌集文庫にて復刊。

「この歌集が刊行されてから既に四十五年。けれども、今もなお世界に争いは絶えない。ニムオロは根室に、真岡はホルムスクに、キエフはキーウへと名前が変った。そうした観点に立って考えれば、ここに詠まれている様々なできごとは私たちの今に直接つながっている。作者個人の人生を超えた時代のうねりや国と国との争いが、この歌集にも確実に影を落としているのである。」
松村正直(文庫版解説より)

釣り上げし氷下魚も凍る海風に背を向けつつ釣り続けをり
助教授の職を辞退しはや三年僻地に貧しき医療つづくる
激浪を呑みつ吐きつ泳ぎたる漁夫の屍【しかばね】浮腫【むく】み剝げたる
龍胆の花咲く丘ゆ見はるかす青き国後還らざる島
ソビエト戦車の軀幹にチェコ人民鍵十字をば書きて罵る

ISBN:978-4-86534-396-0
文庫判222頁
定価 880円(税込)

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