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前田康子は森羅万象を等しく母の眼で見ている。水俣を、長島愛生園を、辺野古を、撲り殺されるアホウドリを、腹ぺこの熊を、路傍の草花を、同じ眼差しで捉えている。本当の事を知る者の冷えきった哀しみと、母としての祈りと。だから、その歌をポケットにしのばせておきたくなるのだ。「古ぼけたお守り」のように。
第5回佐藤佐太郎短歌賞受賞後初となる第六歌集。
会うたびにどこから来たの 朝顔の頃あなたからこぼれ落ちたよ
ひんやりと足踏みミシンに秋が来て踏めば遠くに行けるだろうか
桜いろ桃いろやさしき赤紙は物資不足のゆえと書かれき
おかえりといってらっしゃい言えぬ場所へ子ら二人とも行ってしまえり
ひと粒のぶどうは丸く閉じたのに私の歯もて剖【ひら】かれてゆく
定価:2200円(税込)
判型:四六判ソフトカバー
頁数:188頁
ISBN:978-4-86534-405-9
発行日:2022年8月26日
発行:現代短歌社
発売:三本木書院
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